Claude Code

【番外編】AIに、私のカレンダーへ予定を書き込ませてみた ― 中学1年生でもわかる、読みと書きの違い

連載の番外編。

第3回の最後で、私はこう書いていた。

「次回は、もう半歩だけ進んでみたい。今度は、AIに『予定を作っておいて』と頼んでみる」と。

第4回の本体は別のテーマ(Artifacts)に進んだので、こちらは番外編として、その約束を独立した1本で回収する。

書き込み側の話だ。失敗もあり得る。だから、ちゃんと自分の手で試してから書く、と前に約束した。今日は、その試した記録を、起きたことだけそのまま書く。

第1章 「読む」と「書く」は、似ているようで、全然ちがう

第3回で、私はAIに「私の今週の予定を教えて」と頼んで、ちゃんと答えてもらえた。あれは、AIが私のカレンダーを読んだだけだ。

今日やるのは、AIに書かせるほうだ。

この2つは、目に見える結果はよく似ている。AIがカレンダーに触る、という点では同じだ。けれど、中身は全然ちがう。

中学校のノートに置きかえてみる。

読む」というのは、「となりの席の友達に、ちょっとノート見せて」と頼むのに近い。見せてもらって、終わり。友達のノートは、何も変わらない。万が一、見ている途中で「やっぱりやめておこう」と思ったら、すぐ閉じればいい。

書く」というのは、「となりの席の友達のノートに、自分でペンを入れる」のに近い。一度入れたインクは、消しゴムでは消えない。間違って違うページに書いてしまったら、友達のノートが汚れる。誰かに迷惑がかかる。

読みは、いつでも元に戻せる。書きは、戻せない。

第3回で、私はAIに「ノートを見せてもらう」ところまでをやった。今日は、AIに「ノートにペンを入れさせる」ところまでをやってみる、という話だ。

第2章 いきなり本番では、やらないと決めた

ここで、書く前に立ち止まる時間があった。

私のいつものカレンダーには、家族のことや、仕事関係のことや、いろんな予定が入っている。そこにAIが、もし何かを間違って書き込んだとしたら――別の日に書いてしまった、別の名前で入れてしまった、上から重ねて書いてしまった――それは、私だけの問題ではなくなる。

ペンを入れるのは、最初は壊れてもいい場所にしようと決めた。

具体的には、本番のカレンダーとは別に、実験用のカレンダーを1つ用意した。誰の予定も入っていない、私だけが見るための、白いノートだ。万が一AIがそこで変なことをしても、誰にも迷惑がかからない。

これも、第3回でメールの部屋の前で「ちょっと待てよ」と立ち止まったのと、まったく同じ用心だ。便利だから、で最初から本番にAIを入れない。最初の一歩は、こわれてもいい場所で踏む。

たぶんこういうことは、機能の説明書には書いていない。書いてある通りに進めれば動く、で終わる話だ。

けれど、自分の現実にAIをつなぐときに、いちばん効いてくるのは、たぶんこの「最初の一歩を、どこに踏むか」の判断だと思う。

第3章 実際に、書き込んでもらった

準備ができた。

私は新しい会話を開いて、こう打った。

6月11日に、散髪、入れておいて

それだけだ。

AIの動きが、画面に順番に表示されていった。

まず、「どのカレンダーに入れますか?」というように、対象のカレンダーを確認しにいった。

次に、6月11日を一日まるごと使う形(終日)で、「散髪」という予定を新しく作る作業を、AIが実行した。

そして、私の画面に、こういう趣旨の表示が出た。

予定が、正式に登録されました

これだ、と思った。

念のため、もう一度頼んでみた。「今週末から来週にかけての予定を見せて」と。

すると、6月11日のところに、たしかに「散髪」と並んでいた。

さっきまで、何も入っていなかった日に、私の指示通りの予定が、ちゃんと入っていた。

私はキーボードで、日本語で、ひとこと頼んだ。それだけで、私のカレンダーの中身が、書き換わった。

第4章 第3回と、何がちがったのか

第3回のあの場面と、並べてみる。

第3回で、AIは私のカレンダーに「ちゃんとした入り方」で入って、今週の予定を取ってきて、私に見せた。カレンダー自体は、何も変わらなかった。私が見せてもらっただけだ。

今日、AIは私のカレンダーに、まったく同じ「ちゃんとした入り方」で入って、新しい1行を、自分で書き加えた

入り方は同じ。けれど、起きたことは別物だ。

たぶん、ここが「AIが現実を操作する」ことの、いちばん最初の一歩なのだと思う。

これまでAIにできたのは、「教えてくれる」「考えてくれる」「文章を書いてくれる」だった。

第3回で「見る」が解禁された。私の現実に、AIの目が届くようになった。

今日、「書く」が解禁された。私の現実に、AIの手が届くようになった。

カレンダーの「散髪」1行は、それ自体はちっぽけな出来事だ。けれど、今までAIの中にあった「言葉」が、私の生活の側に、はじめてはみ出してきた。私はその瞬間に、立ち会った。

正直に書くと、AIが書き終えたという表示を見た瞬間、画面を見ながら少しのあいだ動けなかった。便利だ、すごい、ではない。ちょっとした怖さのほうが、最初に来た。

ペンが入ったからだ。

まとめ

今日やったことを、ひとことで言う。

私は、AIに、私のカレンダー(の実験用のほう)へ、はじめてペンを入れさせた

書いたのは、6月11日の「散髪」1件だけ。消えても誰も困らない、いちばん軽い予定だ。けれど、私のカレンダーの中身は、確かに書き換わった。

第3回で渡したのは、カレンダーを「見るだけ」の合鍵だった。

今日渡したのは、カレンダーに「書き込む」ための合鍵だ。同じ部屋でも、入った後に何ができるかが、まったくちがう。

そしてこの差は、たぶんAIをこれから自分の生活につないでいくときに、いちばんちゃんと意識しておきたい線だ。「見る」と「書く」を、自分の中でかならず分ける。書く側を渡すときは、最初は、壊れてもいい場所から踏む。

私は、これからもしばらく、この実験用のカレンダーで色々試そうと思っている。本番のカレンダーや、メール送信や、もっと取り返しのつかない場所にAIの手を渡すのは、もうちょっと、この場所で慣れてからにする。

コードが書けない、地方に住む、ふつうの会社員でも、ここまでは、自分の手で踏める。怖さも、つまずきも、書き換わった瞬間の手応えも、ぜんぶ自分のものとして体験できた1日だった。

また会いましょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 📦 オモチの制作物 ━━━━━━━━━━━━━━━

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