連載第4回。今日のテーマは、Artifacts(アーティファクト)というものの話だ。
最初に、ちょっと変な体験から書く。
私はある日、AIと普通に「今日の晩ごはん、何にしよう」と相談していた。
そうしたら、会話の途中で、画面の右側に、私の家用の献立アプリが現れた。
冷蔵庫の中身を入れると、献立を提案してくれる小さなアプリだ。私が頼んだのは「ちょっと作ってみて」の一言だけ。コードは1行も書いていない。アプリストアからダウンロードもしていない。
数十秒で、私だけの、私の家用のアプリが、目の前にあった。
最初に見たときの感想は、「これ、ずるくない?」だった。
今日はその話を、中学1年生でも分かる言葉で書く。
第1章 Artifactsは「自分専用のアプリを作ってくれる場所」
Artifactsを一言で言うと、AIと会話している画面の中で、その場で動くアプリを作ってもらえる場所だ。
身近なものに例える。
ふつう、私たちが使うアプリは「できあいのもの」だ。アプリストアに並んでいる中から、自分に合いそうなものを選んで入れる。服でいうと、お店で売っている既製品の服を買う、みたいなものだ。
着られる。便利だ。けど、サイズや形は最初から決まっている。袖が少し長くても、自分で工夫して着るしかない。
Artifactsは、これとぜんぜん違う。
イメージとしては、「自分のサイズ、自分の好み、自分の使い方にぴったり合った服を、その場で仕立ててもらう」ようなものだ。テーラーメイドの服に近い。
「もう少し袖を短くしてほしい」「ボタンの位置を変えてほしい」――会話の中でそう言うだけで、目の前のアプリが、その場で作り直される。
これまで、自分専用のアプリを持つには、誰かにお願いして作ってもらうか、自分でコードを書いて作るしかなかった。どちらも、お金か、技術か、時間か、そのどれかが必要だった。
Artifactsは、そのどれもほとんどいらない。話せばできる。
私が画面で見たのは、これだ。
第2章 家族の献立アプリ
最初に作ってもらったのは、さっき書いた献立アプリだった。
なぜ作ったか。理由はものすごく単純で、毎日「今日の晩ごはん、何にしよう」と考えるのが、いいかげん面倒だったからだ。
ありもののレシピアプリも試した。便利だった。でも、どうしても合わない。「家族の好み」が反映されていないからだ。
うちの子は、ピーマンを食べない。妻は、辛いものが苦手だ。私は、夜にこってりしたものは胃にくる。
ありもののアプリは、そんなことを知らない。
そこで、AIに頼んだ。
「冷蔵庫にあるものを入れたら、うちの家族に合う献立を3つ提案してくれるアプリを作って」と。
会話の右側に、1分くらいで、それが現れた。
冷蔵庫にある食材を打ち込む。すると、子供が食べられる味、辛くない、夜でも重くない、その条件で、献立が3つ出てくる。
「子供が嫌いな野菜は隠し味で入れる工夫もある」みたいな注釈まで、ちゃんと書かれていた。
世の中のどのアプリストアにも、「私の家族専用の献立アプリ」は存在しない。当たり前だ。私の家族のことを、世界中で私しか知らないからだ。
その「世界に1つだけのアプリ」が、コーヒーを淹れる時間より短く、目の前にあった。
第3章 地元の少年野球の審判割り当てアプリ
第1回でも少し書いたが、もう少し詳しく書く。
私には子供がいて、地元の少年野球チームでは、親が交代で「審判」を担当する。
誰がいつ審判をやるかを毎回手作業で連絡する仕事が、運営する側からするとなかなか大変だ、と聞いた。
最初は、私もできあいの「シフト管理アプリ」を探した。たくさんある。でも、どれも「少年野球の親の交代」という、ものすごくニッチな使い方には、ぴったりこなかった。
申し込みフォームを別に作って、回答をスプレッドシートに集めて、そこから手で予定を埋めて――どれも、間に必ず人の手作業が挟まる。
そこで、AIに頼んだ。
「親がスマホで希望日を選ぶと、当番表が自動で埋まる仕組みを作って」と。
最初の形は、Artifactsの中で動く小さなアプリだった。その場で動かして、「ここはこうしたい」「ここは違う」を会話で直してもらう。それを下地に、本番用のしくみを組み上げていった。
中で動いているのは、全部無料のサービスだけだ。
身近なコミュニティで、自分が作ったものが普通に使われているのを見るのは、思っていた以上にうれしい体験だった。これも、世界中のどのアプリストアにも、絶対に置いていないアプリだ。
第4章 ある会社の業務管理アプリ(匿名)
これは進行中の案件なので、詳しくは伏せる。
10〜20人くらいで使う、業務管理用のスマホ&PC兼用ページを作っている。
最初の形は、これもArtifactsの中で動かして見せるところから始まった。「こういうイメージのもの、今ここで動かしてみせて」と頼むと、その場で、それっぽいものが画面の右側に現れる。
「ボタンの位置を変えたい」「色をもう少し落ち着いたものに」「この情報も一覧に出したい」――そういう注文を、会話の中で出していく。出すたびに、目の前のアプリが書き換わっていく。
これは、ふつうの開発の現場とは、感覚がまったく違う。
ふつうなら、紙にイメージを書いて、誰かに頼んで、見積もりを出してもらって、待って、できあがって、直してもらって、また待って――というやり取りが必要だった。
それが、会話の中で、その場で動く。
10〜20人で使う仕組みが、コードを1行も書けない私の手で、形になっていく。これが今、現実に起きていることだ、というのは、自分でやっていてもまだ少し不思議な感覚がある。
第5章 3つに共通する、たった1つのこと
並べてみる。
- 家族の献立アプリ
- 少年野球の審判割り当てアプリ
- ある会社の業務管理アプリ
ぜんぶ、「私の困りごと、私のチームの困りごと、私の関わる現場の困りごと」に合わせて、その場で作ってもらったものだ。
世界中のどのアプリストアにも、これらは置いていない。なぜなら、これらを欲しがる人は、それぞれ世界に1人(あるいは数人)しかいないからだ。
ふつう、世界に1人しか欲しがらないアプリは、商売として成立しない。だから、誰も作ってくれない。
Artifactsが変えたのは、ここだ。
「世界に1人しか欲しがらないアプリ」を、私が、私自身のために、その場で作れる。
これまでアプリストアの中から「ちょっと違うけど、まあ近いもの」を探して妥協してきた人すべてに、もう1つ別の選択肢が増えた、ということだ。
ぴったりのものがなかったら、その場で作ってもらえる。それだけで、世の中の「ちょっと不便」の量は、たぶん相当減る。
まとめ
私が今日書きたかったことを、ひとことで言う。
自分専用のアプリは、もう、自分で頼めば作ってもらえる時代になった。
コードが書ける、書けないはあまり関係ない。「こういうの欲しいんだけど」と話すと、その場で、目の前に現れる。
私みたいな、地方に住む、ふつうの会社員でも、家族のために、地元のチームのために、関わる現場のために、自分専用のアプリを作って渡せる。少し前なら、これは「あったらいいな」だった。今は、コーヒー一杯のあいだに「もうある」になっている。
ところで、第3回の最後で、私はこう書いていた。
「次回は、AIに『予定を書き込ませる』ところまで進んでみたい」と。
今日その話を書こうとも思ったのだけれど、正直に書くと、まだちゃんと書き込ませる側を、自分の手で十分に試せていない。実体験のないままそれっぽい話を書くと、この連載の意味がなくなるので、書き込みの話は別途【番外編】として、ちゃんと自分の手で試したあとに書く。
少し時間をください。番外編が出るときは、また合鍵を渡す話の続きとして、まっすぐに書く。
それまでの次の回は、今日と同じように、また別の「私が自分の目で見た、AIの新しいできごと」を1つ持ってくる予定だ。
また会いましょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 📦 オモチの制作物 ━━━━━━━━━━━━━━━
コードが書けない私が、自分の困りごとを解決するために作った仕組みを、そのまま使える形で公開しています。すべて、私が実際に自分で使っているものです。
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